中澤佑二には"ドラマ"がある
現在のJリーガーのほとんどはプロになる前から注目され、まして日本代表であれば当然少年時代から"天才"と謳われメディアをにぎわしてきたような選手ばかりである。
中澤佑二は、全く無名の選手だった。
スカウトされたわけでもなく、ユースから注目されてトップチームに上がった選手でもない。21歳の時にベルディ川崎のゲームにいきなり登場し、その半年後には日本代表に選出。メディア的には本当に「突然現れた彗星」の存在である。しかし、
中澤佑二の物語には確実に、誰もが応援したくなる様な"ドラマ"が存在する。
中澤は天才ではない。その熱い志と努力によって成り上がり、J Dream(Jリーグ&ジャパニーズ ドリーム)を実現させ、日本代表にまで到達してしまう。「平凡な才能であったが故の努力」といってしまえばそれまでだが、ひとが応援したくなる様な「人生の才能」をこの選手は持ちあわせている。
20歳になってもアルバイトを続けながら高校生に混じって練習に参加していたり、自ら売り込んで、交通費さえ出ない単なる「練習生」として往復3時間もかけてベルディの練習に参加していたことなど、少年の頃からメディアに騒がれてきた「天才たち」であれば、「とてもやってられない」というような道のりを、ひとり歩んで来た。プロ選手であれば必ずぶちあたる「壁」も、強い意志と努力によってきっと乗り越えてしまうのだろう。
それがプロ・アスリートにとっての「本当の才能」ということではないだろうか。
中澤を取材した人の多くがファンになってしまうという。フィールドでの熱いプレースタイルとは対照的な謙虚で礼儀正しい姿勢と、いくつもの困難に遭いながらも決して夢をあきらめず、努力でそれを乗り越えてきた人間だけがもつ懐深さと高い志を感じ取るからだろう。
今の日本の若者たちにとって『未来』という言葉の中に「夢」とか「希望」という意味は含まれていないらしい。「夢をあきらめない」どころか「夢を持てない」人が多い中で、この中澤選手の姿勢はすべての日本人の心の中にある『未来』という言葉の意味の中に、もう一度、「夢」や「希望」というワードを取り戻すことが出来うる、すばらしい実例なのではないだろうか。
The effort is superior to a genius. 努力は天才に勝る。
中澤佑二の為にあるような言葉だ。
●中澤佑二選手プロフィール
生年月日: | 1978年2月25日 |
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出身: | 埼玉県吉川市 |
身長/体重/血液型: | 187cm・78kg・AB型 |
現所属チーム: | 横浜F・マリノス |
略歴: | 1998年 ブラジル留学、FCアメリカと契約 1999年 ヴェルディ川崎とプロ契約 日本代表初選出、初出場 JOMOオールスターサッカー出場 (1999〜2001,2005/敢闘賞,2006/MVP受賞) 2000年 シドニーオリンピック出場(ベスト8) AFCアジアカップ出場(優勝) 2003年 2003J.LEAGUE DIVISION1 1st/2nd STAGE 優勝(年間優勝) 2004年 2004J.LEAGUE DIVISION1 1st STAGE 優勝 2004SUNTORY CHAMPIONSHIP 出場(年間優勝) 2006年 FIFAワールドカップ ドイツ大会出場 |
受賞暦: | Jリーグ新人王(1999年) AFC/年間ベストイレブン(1999年) Jリーグ最優秀選手賞(2004年) Jリーグベストイレブン(1999、2003,2004、2005年) |